プラネタリアTOKYO(有楽町)では、プラネタリウム100周年記念事業公認企画として、現存するコニカミノルタ製最古のプラネタリウム「ミノルタプラネタリウム MS-10」1号機の公開展示を2023年10月6日(金)より開催します。
ミノルタプラネタリウム MS-10
MS-10は、ミノルタカメラ株式会社のプラネタリウム部門(現:コニカミノルタプラネタリウム株式会社)が初めて量産品として開発したプラネタリウムで、6等星まで、約5000個の星を投映することができます。合計58台が生産されたうち、1966年に山口県山陽町(現:山陽小野田市)に1号機が設置されました。MS-10 の派生モデルは米国にも輸出され、2017年にアカデミー賞で6 部門を受賞した映画「ラ・ラ・ランド」では、ロサンゼルスのグリフィス天文台のシーンで、この機種が登場しています。
「山陽小野田市青年の家」で使用されていました
天文館は1966(昭和41)年、前年に開園した観光施設「山陽パーク」内に開館し、その後、山陽小野田市青年の家・天文館として57年間の歴史があるプラネタリウムでしたが、建物や設備の老朽化により閉館となり、プラネタリウムの投映事業は2023年3月で終了となりました。この貴重なMS-10 1号機を山陽小野田市のご厚意により引き取り、今回の展示となりました。この機器は、2021年に科学技術の発達史上で重要な成果を示す資料として、国立科学博物館の「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されています。
「未来技術遺産」とは
国立科学博物館が実施している登録制度で、次世代に継承していくうえで重要な意義を持つ資料や、国民生活・社会・経済・文化のあり方に顕著な影響を与えた資料の保存と活用を図ることが目的です。2008年に第一回登録製品が選定されて以来、毎年一回選定されています。
■登録内容
登録番号:第00312号/登録年月日:2021(令和3)年9月14日
登録区分:第一種(大量生産品等同様のものが複数あるもの)
選定理由:
本資料は、ミノルタカメラ株式会社(現:コニカミノルタプラネタリウム株式会社)が、量産品として最初に販売した中型プラネタリウムである。恒星のレンズ投映式、惑星の年周運動の投映が可能であった。ブライトスターにマイクロレンズを使用、投映の精度や正確さに加え恒星投映機の籠型の「キラメキ装置」で恒星全体がチカチカと輝く感性に訴えるような演出ができるなどの特徴がある。当時の技術や天体教育を示すものとして重要である。
MS-10 1号機の公開展示に関して暖かいコメントをいただいています!
■50年以上の長い間、地域の皆様に季節ごとの星座や星々の美しさ、面白さを届けてまいりました「ミノルタプラネタリウムMS-10」が、稼働していた当時の状態のまま、歴史資料として展示され、多くの方にご覧いただけるとお聞きし、大変光栄で嬉しく思います。コニカミノルタ株式会社様にとっても大変貴重な機器であると伺っております。今後も引き続き未来技術遺産としての価値が、後世に引き継がれていくことを心より願っております。
山陽小野田市長 藤田剛二
■プラネタリウムは、世界シェア7割強を占める誇るべき日本のモノづくりである。欧米で開発されたプラネタリウムは、簡易だが安価な国産化により日本各地に設置された。明治以前から天体観測の文化があった日本で、国産のプラネタリウムは子供たちに宇宙の神秘と美しさを伝え、世界が驚く進歩を遂げてきた。「MS-10」は、その始まりの一台である。
国立科学博物館名誉研究員
元産業技術史資料情報センター長
鈴木一義
■山陽小野田市が運営してきた研修施設「青年の家」附属の「天文館」で長く活躍したプラネタリウムMS10。1966 年に設置され半世紀を越え、この投影機で星を見せ続けた「プラネタリウムの会」に対し、日本天文学会は第1回の天文教育普及賞を授与した。進化し続けるプラネタリウム投影機だが、その礎を築いた歴史のある初期の投影機が保存されることは、日本の技術とその歴史が残されることに他ならず、誇りに思う次第である。
自然科学研究機構国立天文台 上席教授 渡部潤一
■コニカミノルタ(株)150周年、おめでとうございます。そして、光学式プラネタリウムの歴史が100年を迎える今、1960年代から全国のプラネタリウム施設を支えてきた名機、さらに未来技術遺産にも選定されているMS-10の公開展示が行われることをとてもうれしく思います。仕組みと形を関連させて理解できる初期の光学式プラネタリウムの展示は、未来につながる意義深いことです。
日本プラネタリウム協議会 理事長
名古屋市科学館 天文主幹
毛利勝廣
■日本のプラネタリウム文化はドイツ製投影機による公開から始まった。以来30年近い時を経て登場した国産プラネタリウムMS-10によりプラネタリウム文化が膨張した事実は、歴史に記録されるに値する。しかし、記録以上に重要なのは、記憶されることである。この度、実物資料が公開されることで、書物からは得られない圧倒的なインパクトを多くの人に与える場が生まれた。科学技術史資料の継承に非常に価値のあることである。
大阪市立科学館 副館長 吉岡克己
■MS-10は国産プラネタリウムの黎明期における重要な資料で、日本におけるプラネタリウムの普及・発展に多大な貢献をした名機です。開発に尽力した技術者の方々には心から敬意を表します。100年後には重要な技術文化財になっていることでしょう。有楽町は、東京最初のプラネタリウム館で、空襲で焼失した東日天文館があった場所です。この地に展示されるということが特別な意味を一層引き立てます。歴史をふりかえることは、未来を見通すヒントにつながります。プラネタリウム100周年にふさわしい素晴らしい取り組みをされることに、尊敬の念を抱きます。
明石市立天文科学館 館長 井上毅
■MS10は私にとって生まれてはじめて触れたプラネタリウムでした。町田東急百貨店の屋上にあったスターホールで憧れの解説員のバイトをしたことが、現在に至る最初の一歩だったのです。手動で動かすMS10は美しい星を見せてくれるだけでなく星の動きや天文現象など多くのことを教えてくれました。その後さまざまな機械を動かすことになるのですが、今でもMS10は私にとって恩師であり子どもでもあるような大切な存在です。
コスモプラネタリウム渋谷 永田美絵
ー『ミノルタMS-10』公開展示概要ー
開催期間:2023年10月6日(金)~11月13日(月)予定
公開場所:プラネタリアTOKYO(有楽町) センターホワイエ
*11月14日(火)以降は同施設内DOME2ホワイエへ移設して恒久展示予定
料金:無料