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LIVE in the DARK

2021/6/17(THU).18(FRI) moumoon

夏至を前に、梅雨の晴れ間の空が広がった6月の夜。プラネタリウムを舞台に、音楽と星のきらめきを味わう『LIVE in the DARK』に集った観客たちの表情は明るかった。出演は3度目の登場となるmoumoon。昨年春から幾度の延期を経て、いよいよ再会できるのだ。

赤々と沈む夕日を見上げながら、moumoonの登場を待ちわびる。やがてBGMが止まると、ふたりがステージへ。ヴォーカル・YUKAと、ピアノ・真藤敬利。「LIVE in the DARK、ようやく実現しました。皆さんに、またこのプラネタリウムでお会いできてうれしい!」。熱い拍手に応えるように、思わずという様子で大きな声で語り出したYUKAの言葉には、歓びが満ちあふれている。一層盛り上がる拍手の中、流れ出すピアノのイントロダクション。ダンスのようにウィンドチャイムを鳴らし、YUKAが歌い出す。

1曲目「One Step」の高鳴る鼓動のようなリズムが、これからはじまる夜空の旅の幕開けを刻む。「昨日愛せなかったもの、今日抱きしめて 昨日よりずっと 凛とした君が見える」。そんなはじまりの歌に応えるように、2曲目「pride」が続く。「私はわたし」と祝福する歌声に聴き入るうちに夕陽は落ち、やがて一面の星空が広がった。

3曲目は「トモシビ」。掴みきれない「もの」を、灯火の光になぞらえたやさしい歌に寄り添いながら、星空は日周運動をはじめる。星々に合わせるように、テンポアップしていく音楽。あたたかな共感のこもった拍手のあとの4曲目は、少しもの憂げな「冷たい雨」。下周りでダイナミックに回転しながらきらめく星々が、まるで雨のように私たちに降りしきる。

「わたしは普段、思っていることを言葉にするのが下手だけど、こうして音楽にのせれば伝えられるんです」と呟いたYUKAの言葉が印象的だった。しんみりと音楽への思いを語ったあと、とびっきりの笑顔で「だからほんとうに嬉しい。お客さんがいて、聴いてくれるって最高ですね!」と彼女が声を大にしたとき、会場から湧きおこった拍手も胸を打った。

MCのあとは、5曲目の「金の砂漠、銀の星空」。静かなイントロから、物語がきらめくサビへ。弾むような音楽とともに、宇宙まで上昇しそうな天の川に吸い込まれ、私たちは異世界へと運ばれていく。

そして6曲目。名曲「ハレルヤ」の登場だ。SFのような世界観にふさわしく、YUKAの声に強さと、勇ましさがみなぎる。「ハレルヤ 白夜のトウキョウに 夢見よ、踊れよ」。祈るような歌声に共鳴するように、空にはフレアがオーロラのように浮遊し、やがてYUKAから発せられた光のように、私たちのもとに降り注ぐ。人間の声の強靭さと、爆発するようなエネルギーを感じる絶唱だった。

7曲目「Do you remember?」でも、YUKAは信じる力を力強く歌い上げる。空には色とりどりの光が瞬き、声と音楽に呼応する。8曲目は『LIVE in the DARK』でどうしても初披露したかったという新曲「未来よ、私を追いかけろ」まで、どんどん高まっていく彼女の気迫に感情が揺さぶられ、涙がこぼれるのを止められなかった。

そして9曲目は「うつくしい人」。この曲は、まるで解放の呪文だ。いつ聴いても染み入るが、すべての人がどこか息苦しさを感じる今だからこそ、新たに胸に響く言葉やフレーズがある。きっと、アーティスたちがこめる想いだって、そんなふうに日々変化するのだろう。世界を癒すように浮遊する7色の光に包まれ、そんなことを考えていた。

会場中を埋め尽くす満ち足りた気配のなかで、YUKAが再び感謝を語る。会場後方で見守っていたメンバー・MASAKIが紹介され、感動は最高潮に。少しずつ白んでいく空の下、この夜のラストとなる10曲目「愛は続くよどこまでも」がスタートした。「さあ 踏み出そう 夜明けがもう 近いよ」という力強いメッセージを、噛みしめるようなフィナーレ。8月の終わりに再びスタートする次回公演の告知に盛り上がったところで、1年4ヵ月越しのmoumoonの『LIVE in the DARK』は終演を迎えた。

“やわらかい月”という名を冠したmoumoonの『LIVE in the DARK』は、毎回新しい驚きと、その名前に反した強さを私たちに与えてくれる。YUKAの歌声が象徴する唯一無二の、圧倒的なパフォーマンスは言うまでもないが、それ以上に音楽の可能性、音楽家の強さに胸を打たれるのである。音楽家にとって、歌う場所を奪われたこの1年がどんなにつらい出来事だったのかは、想像に難くない。それでも、彼らは「たしかなものがひとつだけ この愛は続くよどこまでも」と歌う。これが希望でなくなんだろう。

夏の終わりも、来年もまた、あの場所でmoumoonに会えるようにと祈ってやまない。

■ライター・高野麻衣

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