過去のイベント

2021/3/19(FRI) 笹川美和

2021年3月。春分の日を前に桜の開花が報じられた東京で、実に1年ぶりのLIVE in the DARKが開催された。その記念すべき夜を任されたのは、圧倒的な歌唱力で季節の移ろいや心のゆらめきを歌い上げるシンガーソングライター、笹川美和。LIVE in the DARKを愛してやまない彼女の音楽世界に再会できる喜びが、会場のコニカミノルタプラネタリウム“天空”に満ちていた。

足を踏み入れると、ドームには懐かしい夕空。まるで故郷に帰ってきたような安心感に包まれる。しばらくしてBGMが止むとサポートメンバーの登場だ。ピアノの佐合庸太郎、ヴァイオリンの根本理恵、そしてベースの渡邉紘によるトリオ。チューニングの音が心地よく響く中、黒いドレス姿の笹川が現れ、ステージ中央に腰かける。「拍手はいちばん最後までとっておいて、ぜひ星の世界を堪能してください」。穏やかな口調に歓びがあふれる挨拶に、暖かな拍手が沸き起こった。

一瞬の静寂のあと、ピアノの前奏とともにスタートしたのは、1曲目「泣いたって」。笹川の声に弦の音が絡みあい、一瞬で世界観に引き込まれた。2曲目は「霧」。人を愛することの複雑な感情を夜霧に託す、エキゾティックな旋律がたゆたう中、空の色は濃さを増し、やがて星が瞬きはじめる。曲の終わりで、会場は暗闇に包まれた。ひさしぶりに体感したLIVE in the DARK――音楽と星空の見事な融合に、序盤から涙がこぼれた。

3曲目の「星の船」は、どこか懐かしいゆったりとした楽曲。「季節が変わった 今、変わった」と歌う声に合わせ、星空もまた、ゆっくりと日周し季節の移り変わりを表現していく。4曲目の名曲「流れ星」では星空がダイナミックに緯度変化する。「愛とは無限の流れ星」。心に残るフレーズが、一瞬の流星のように、体を満たしていった。

少しポップなイントロが流れると、5曲目「紫陽花」の世界へ。ドームには大きな月が現れ、一面の紫陽花が月光に照らされ輝いている。5月の雨を想う曲が終わると、笹川のMCで「今夜のセットリストは1年前の6月、梅雨/初夏をイメージして作りました」と解説が。緊急事態宣言による延期で季節はずれたが、いいセットリストができたので、そのまま届けたかったという。

「次は、少し雰囲気を変えて」という言葉とともに演奏されたのは、日本が誇る昭和歌謡のスタンダードナンバー「黄昏のビギン」。「雨に濡れてた 黄昏の街」ではじまる中村八大の洒脱な名曲に、笹川の声は驚くほど似合う。ピアノと弦の音もしっとりと寄り添い、緯度変化していく星空とあいまって、酔いしれるような時間だった。

続く7曲目は「無情」。「あたしを求めてくれるのならば あたしはあげるはあなたに」と歌い上げる激しい曲に合わせるように、星空には火の粉が舞い上がり、やがて深紅の花びらへと変化していく。8曲目の「琥珀色の涙」を挟み、9曲目は「蝉時雨」。穏やかな歌いだしとともに、星空から滑り落ちるように水たまりから空を見上げるような視点に変化する。ドームには光を透かした水面が広がり、やがて上昇していく。忘れられないのは、終盤のサビを笹川がアカペラで歌い上げる瞬間、一瞬だけ広がった満天の星。圧倒的な幻想体験だった。

「これだからやめられないんですよね、LIVE in the DARKは!」という感嘆からはじまった2回目のMCに、会場は熱い賛同の拍手に包まれた。「目の前にみなさんがいるといないとではこんなにも違う」という笹川の言葉は、裏を返せば聴き手の思いでもあっただろう。生の音楽だからこそ、この星空がこんなにも染み入るのだと。

今回のLIVE in the DARKのため、笹川とメンバーが作った新曲「アルタイル」が始まると、ドームにはわし座を中心に夏の星空につつまれる。2度目のサビではこと座やはくちょう座、さそり座などの星座絵が浮かび上がり、「いつも 今も 心に広がっている」という歌詞とリンクしていく。そして11曲目の「光とは」。ゆっくりと歩みだすような音楽に合わせて、空は明るくなっていく。最後の挨拶で笹川が「ラストはこの曲に決めている」と語った12曲目「高鳴り」とともに、会場は希望の夜明けを迎えた。

終盤、星々が音の粒になって、体に染みわたっていくような感覚に震える場面もあった。緊張にこわばっていた身体がほぐれ、ああ、これを欲していたんだなと実感した。3度目となった笹川のLIVE in the DARKは、「これだからやめられない」という彼女の言葉そのままの経験だったと思う。星々や月と同じように音楽は私たちを癒し、目に見えずとも、いつもそばで支えてくれる。「アルタイル」に続く四季折々の星空と音楽を、これからも、何度でも味わいたい。

■高野麻衣(音楽ライター)



2020/2/28(FRI) Salyu

春の気配を感じはじめた、2月の終わり。「LIVE in the DARK tour w/Salyu」東京公演の最終日、コニカミノルタプラネタリウム“天空”は、足を踏み入れた瞬間から特別な緊張感に包まれていた。

Salyuの登場を待つ観客の前で、ドーム内の夕空が少しずつ赤く、そして深く沈んでいく。BGMのなか静かに、市川和則(ガットギター)、須長和広(ウッドベース)が登場。チューニングの音が密やかに響く。やがて赤いワンピース姿のSalyuが現れ、ステージ中央で挨拶をはじめる。メンバーの紹介や、リクライニングシートや拍手の案内を丁寧にしたあと、「これからの1時間をひとつの音楽だと思って、スペシャルな時間を刻んでください」と締めくくるSalyu。

一瞬の静寂のあと、低音がしみこんでいくようなベースの前奏。鼓動のようなリズムとともに、「I miss you…」と繰り返される声。1曲目の「飽和」だ。「一億光年の果てにもとどいて」という歌詞とともに、心が宇宙へと誘われていく。曲が「光りの束」へと変遷すると、夕景はフェイドアウトし、空には星が瞬きはじめた。曲の終わり、ステージが暗闇に包まれたときには、会場が完全にLIVE in the DARKの世界に没入しているのを感じた。

2曲目は「再生」。星空はゆっくりと日周をつづける。宇宙の旅人が故郷への思いを歌うような3曲目「コルテオ」では、楽曲の盛り上がりとともに、空にオーロラが漂いはじめた。「行く先は誰にも知らされていないから 時々迷っても また歩き出す」。暗闇をあてどなく進む色とりどりのオーロラは、儚いようで力強い。そのさまはSalyuの歌の引力と重なって、震えるように感動的だった。

4曲目は「VALON-1」。ドームには月夜の静かな海。暗闇の夜に夜明けを祈り続けるような楽曲に、やさしく寄り添うような神秘的な映像と、サビで繰り返される「きっと…」という言葉が、じわりと胸に響いていく。

5曲目の「体温」では天の川がダイナミックに回転していく。「あなたと私は 本当に それぞれでよかった」「なぜならあなたを抱きしめるから 二人の体温 違っているから」。包み込むような歌声と弦の響きの中で、宇宙みたいな音があるとしたらこれだろうか、などと考えていた。

そして6曲目「landmark」へ。エキゾティックな短調の響き、力強く刻むようなリズムとともに空に浮かび上がる雲と月。「何に立ち向かっていったらいい 何度悲しみ飲み込んで アア それはあたしだ」。暗闇でひとり叫び続けるようなSalyuの歌声は、それこそ広大な宇宙そのもののように神秘的で、信じられないほど美しく、悲しく、心臓をぎゅっと掴まれるようだった。そんな声があるのだ、ということをはじめて知った気がした。

7曲目は一転して、日常の一瞬を描くような「messenger」。ゆっくりと日周する星空にほっと息をつく。「そこにメッセージがなくても みんな次の何かに伝える メッセンジャー」という歌詞に、ままならない日常を肯定されたような気さえした。

最後は「to U」。静かなイントロに、囁くようにはじまる歌。「沈んだ希望が崩れた夢が いつの日か過去に変わったら 今を好きにもっと好きになれるから」と語りかける名曲とともに、夜空は白み始め、ドームの星は消え去っていく。夜明けの空を見つめながら「愛」と繰り返すSalyuの声に、もはや涙をぬぐうことすらできなかった。

LIVE in the DARK の終わりが近づく。1時間と少しを一気に駆け抜け、Salyuが語りはじめた。「音楽と宇宙、光にインスパイアされながら、今しか刻むことのできない演奏ができたと思います。気がつけば変化している空のように“あいかわらず”なんてこの世界にはないから、これからも歌いつづけます」。歌声のように確かな強さを秘めた最後の挨拶とともに、会場は希望に満ちた朝を迎えた。

暗闇のなかで、不安定な心に直接響いてきた、圧倒的な歌声。弦が擦れる、あえかな音。無条件に人の心臓を掴む声は存在する。その声だけで人は、宇宙さえ旅できる――。悲しみを照らす星々のような音楽に出会えたことに、感謝しかない夜だった。
Salyuの言葉を借りれば「安心のエネルギー」を浴びてほっとしたからなのかもしれない。

感染症対策によるライブの自粛で、音楽を愛する人はみな、たんなる悲しみ以上の不安や、無力感に覆われていたと思う。しかし、それをはねのけてくれるのも音楽だと、私たちは知っている。

どんなときも夜空がそこにあるように、私たちには音楽がある。そう信じる力を、あの夜のステージから確かにもらった。ドームの空を覆った夜明けの光を、絶対に忘れないだろう。

■高野麻衣(音楽ライター)



2020/2/20(THU) 堂珍嘉邦

堂珍嘉邦の“帰還”、だった。2019年春、コニカミノルタ プラネタリウム“天空”を舞台に圧倒的なパフォーマンスを見せた彼の「LIVE in the DARK」が帰ってくる。寒さの残る2月の街から会場に到着し、期待に包まれた観客の熱を感じながらドームに足を踏み入れるとやはり、あの日と同じ夕日に照らされた空。しかし、リクライニングシートでくつろぐ観客の様子は前回より穏やかだ。堂珍嘉邦の音楽を愛する人々が、プラネタリウムという会場に馴染んでいる様子が垣間見えて、少し嬉しく なる。

空の色が赤く、日没の色に変化していくとBGMが止み、ギターの石井マサユキ、キーボードの上田禎が登場した。拍手ののち、あえかに響き始めるキーボードの音。抑えた興奮と期待に満ちた、しばしの静寂。そして、ゆっくりと登場した堂珍。「LIVE in the DARKへようこそ。天体とともに、歌と演奏を五感で感じてください」。語りかける声すら音楽の一部であるような演出に、前回のカジュアルな一体感との違いを感じてハッとする。これから、なにがはじまるのだろう――高まる鼓動を鎮めるように、キーボードがやさしいイントロをなぞり始める。「アンドロメダ」だ。

堂珍嘉邦×TICA名義の同曲。薄明りの中、石井の作詞による美しい日本語を丁寧に紡いでいく堂珍の歌声に、序盤から涙がこぼれてしまった。「僕らの帰る家は 空の彼方 星たちがみな辿り着く場所」と歌うこの曲は、宇宙への旅の誘いであると同時に、誰もが探している居場所を肯定する歌でもある。またここで会えてよかった、と心から感じられた。

2曲目「未来ハンモック」の途中、会場の空には星が輝きはじめた。やがて陽の光は完全に消えて、一面の星空へ。瞬きながら、ゆったりと日周する星と音楽だけの世界――LIVE in the DARKの真骨頂だ。そして暗闇のなかで、アコースティックギターの音に包まれる安らぎを感じながら、3曲目の「evergrey」へ。「限りない毎日を、探してる 散々な思い出も、愛してる」。白でも黒でもない、許しに満ちたやさしい世界で、堂珍の声が心にそっと触れていくようだった。
4曲目Spiral Lifeのカバー「CHEEKY」がはじまると星空が緯度変化し、スピードが上がっていく。そうして盛り上がった5曲目は「Lasers」。声が持つエネルギーそのもののようなやさしい色彩のレーザーが、堂珍から星空へ、そして私たちへと降り注ぐように流れていった。

「みんなリクライニングしてないでしょ?」という軽いMCに笑いがこぼれる。「ここからは本気で眠らせに行くから」と観客をあたためつつ、6曲目に披露するニーナ・シモンの歌唱で知られる名曲「ライラック・ワイン」について、熱っぽく語る堂珍。歌への情熱が垣間見えるこういう瞬間が、とてもすてきだ。情熱的なカバーに続く7曲目は、南国を思わせるレゲエのリズム。Fishmansの名曲であり、もはや彼自身の定番である「いかれたBaby」である。

そして8曲目「Heavenly」では、星空が海底へと変化した。水面に差し込む月の光が水中をたゆたい、やがて光を求めるかのように水面近くへ浮上していく――堂珍がイントロで呟いた、「これ、めちゃくちゃ綺麗なやつ」という言葉に共感した人も多いだろう。観客の私たちと同じように、歌手もまた「綺麗だな」と思っている。その感覚の共有が、奇跡みたいな一体感を生むのだ。

星空から天使の羽が舞い降りる9曲目「MY ANGEL」もまた、ハイライトというべき感動を味あわせてくれた。前回のLIVE in the DARKでは、石井(ギター)が堂珍の為に10年前に作った未発表曲として初披露された楽曲だ。

10曲目は「How I love you so」。ピアノの音に寄りそうように、「どんなときも歌っていく」と語りかける楽曲にあわせて、しみじみとした朝焼けを迎えていく。この1時間で痛いほど感じた堂珍の音楽への愛をかみしめながら、涙がこぼれるのを抑えられなかった。

最後のMCのあとは、11曲目の「BIRDY」へ。世界が広がっていくようなリズムの打ち込みとともに、物語がはじまる音楽。未来へ背中を押されるように、LIVE in the DARKは終演を迎えた。

二度目の体験となった堂珍嘉邦のLIVE in the DARKで感じたのは、音楽は進化するものだという希望だ。音楽は時間の芸術であり、同じものは二度と再現できない。それなのに、何より鮮明に「あの時」を思い出させる不思議な存在だ。その裏に、歌い続け、奏で続ける演奏家たちのどれだけの努力が隠されているのだろう。

前回の公演と選曲に大きな変更がなかったにも関わらず、セットリストの流れでまったく違う印象を受けたのも、経験を経てより美しい世界観を作ろうと尽力した堂珍らの演出や、演奏の工夫のためだろう。そうしたすべての「進化」に敬意を表する。「堂珍嘉邦は歌がうまい」なんてとっくの昔に語りつくされた言説だけれど、それでも私は、音楽を愛するすべての人に伝えたい。いつか星空の下で、彼の歌を聴いてほしいと。

■高野麻衣(音楽ライター)



2019/12/6(FRI) 古内東子

街中にイルミネーションが輝く、12月の夜。初雪のニュースも流れたこの日、2019年最後のLIVE in the DARKに登場したのは、様々な恋愛をメロディに乗せて歌い続けるシンガーソングライター、古内東子。ドームに投映された夕日の空は、淡いピンクまじりのマジックブルー。やわらかい光がしだいに暗くなっていく。

BGMの中で待つ観客たちの前に、サポートメンバーが静かに登場する。鍵盤の河野伸と、ギターの石成正人だ。チューニングを見つめていると、やがて音がやみ、古内東子が現れる。黒いドレス姿で、観客の拍手の応えるように手を振る古内。スツールに腰を掛けた彼女が「私の姿はいいので、360度の映像と星空の中で、音楽と言葉を楽しんでください」と挨拶をすると、会場は笑い声がこぼれ、あたたかな一体感に包まれた。

ピアノのイントロに導かれるようにこぼれた旋律にはっとする――1曲目は、「帰る場所はあなた」。「一人で生きるよりも二人で描く毎日」の尊さに気づいた主人公の歌詞と、せつなくも希望に満ちた音の広がりが印象的な、はじまりの1曲だ。
2曲目は「半分だけ」。一転して、大切なものができたからこそ経験する臆病さをテーマにした、しっとりしたバラードだ。これぞ古内東子というせつないラブソングに聴き入るうちに、空にはしだいに星が現れる。曲の終わりでステージは暗闇に包まれ、LIVE in the DARKの世界が完成した。

瞬く星空の下、懐かしい洋楽のようなイントロとともに3曲目「流れ星」がスタートする。「You are my shooting star 心を奪って消えていく」。星のような人への震えるような気持ちと、思いは届かない、恋はしないという断言――憧れにまつわる普遍的な感情を等身大の言葉で綴りながら、どこにもない印象的なメロディが寄り添う。これが古内東子の世界、と納得するようすばらしい体験だった。
続く「本当ね」はファンの中でも熱狂的なフォロアーを持つ曲。まさかこの曲が聞けるとは、と心の中で叫んだ人も数多くいただろう。

余韻に浸りながら、1回目のMCへ。プラネタリウムの世界に没入していたのは古内も同様だったのか、「プラネタリウムで歌うことがこんなに落ち着くとは」という感嘆がこぼれた。子どもの頃、部屋を真っ暗にしてヘッドホンで好きな音楽を聴くのが好きだった、という告白に、彼女と音楽の親密さを感じる。

MCのあとは、久々に歌うという5曲目「月明り」。ドーム内には大きな月が昇り、東京の街を照らす。「やっぱり ここが 私の街だもの」という歌詞に、前に進み「ここで生きよう」とする主人公の意志を感じる失恋ソングだ。6曲目「星空」は、車窓から見上げる星空からはじまるせつない恋の歌。聴いている多くの人が過去にフラッシュバックできるような恋の情景を、LIVE in the DARKの星たちが一層リアルに彩っていく。

7曲目はゴージャスなイントロではじまるバラード、「KOKYO」。「Good night, KOKYO強くなって帰るから」と繰り返すサビが印象的な旅立ちの歌に、スピードを上げて回転する星空が寄り添う。
続く8曲目「歩き続けよう」もまた、新しい出会いと覚悟の歌だ。「振り返ることもできず ただ真っ直ぐ歩いてきたけど そばにいてくれる人と行くことができれば これからは」と紡がれる決意を祝福するように、ドームの空は舞い散る花びらでいっぱいになり、あふれる涙を止めることができなかった。

9曲目の「pale moon」では、銀座の夜景に雪が舞い落ちる光景が、空いっぱいに広がった。2度目のMCでは、ドーム内にLIVE当日の東京の星空が投映され、オリオン座がきらめいていた。「憧れるからこそ、月や星の歌を書くのかもしれない」という古内の言葉に、「あの日の月」を思い出しながら、人は進んでいくのだと思えた。

10曲目では代表作「誰より好きなのに」が、この夜のクライマックスのように演奏される。そして、夜が明けた空の下で歌われた最後の曲は、「コンパス」。「時間を掛けてゆっくり探せばいいよ、ゆっくり」。古内の包み込むような言葉で、この夜のLIVE in the DARK は終演を迎えた。

暗闇の中だからこそ「私」と「音楽」がふたりきりになるLIVE in the DARKは、どんなときも私たちに寄り添ってくれる「音楽」の親密さを、より強く感じられる場所だ。どうして古内東子が「恋愛の神様」と呼ばれるのか――星空の下、彼女の音楽をむき出しの心で聴いて、真の意味で理解できた気がしている。人を好きなること、なにかに憧れることは、痛みを伴うことも多いだろう。それでも私たちは、その愛のために、前に進んでいける。一年の終わりに、来るべき未来へのエールを受けとるような、夜だった。

■高野麻衣(音楽ライター)



2019/11/15(FRI) Do As Infinity

冬の足音も近づいてきた、11月の夜。結成20周年を迎えた音楽ユニット、Do As InfinityがLIVE in the DARKに登場した。コニカミノルタプラネタリウム“天空”のドームに投映された夕暮れの空の下は、期待に満ちた観客たち。賑わう人々の頭上で、冬めいた日の光がしだいに暗くなっていく。

BGMが止むと、鍵盤の伊藤拓人を先頭に伴都美子(ヴォーカル)、そして大渡亮(ギター)の登場だ。観客の拍手に応えるように手を振るメンバーに、一気に親近感が湧く。伴が「今夜はぜひ、五感を使ってLIVEを楽しんでください」と挨拶。彼女がスツールに腰を掛けると、会場は一瞬の静寂に包まれた。

神秘的なピアノのイントロが鳴り響く。1曲目の「空想旅団」。「目を閉じて耳を澄ませ イメージを受けとめよう」と呼びかける冒頭のフレーズが、先刻の伴の言葉と呼応する。歴史のなかのさまざまな瞬間とともに、1999年の彼らのスタートを振り返る、勇壮なDo As Infinityの音楽世界に、一気に引き込まれていくのを感じた。

2曲目は「黄昏」。ギターの音とともに、晩秋の季節にぴったりとなじむせつなげなメロディに酔いしれる。曲の中盤で、茜色だった空にはしだいに星がまたたきはじめ、やがて会場は暗闇に包まれた。LIVE in the DARKの醍醐味である。

満天の星々の下でスタートした3曲目は、「深い森」。「僕たちは生きるほどに 失くしてく 少しずつ」。痛切なサビが、印象的な名曲だ。つづく4曲目は「柊」。ミディアムバラードのテンポに合わせ、周回する星々を見上げながら、あらためて楽曲のすばらしさをかみしめるような経験となった。

つづくMCで伴から、「プラネタリウムにきたのは生まれて初めて」という衝撃の告白が。大渡が理由を尋ねると、「故郷では、自然の夜空がプラネタリウムみたいなものだったから」と答え、会場全体が納得の笑いに包まれた。その後大渡が「ギターの手元が見えない、こんな緊張感は初めて」と本公演ならではのコメントも。

MCのあとは、5曲目「We are.」。「私たちはこの幾千の星に生まれたの」という高らかなサビの歌詞とともに、夜空には流れ星をイメージした光が駆けめぐる。ミディアムバラードの6曲目「はじまりの場所」では、星空がダイナミックに回転する。まるで宇宙という大海原を漂うような、LIVE in the DARKならではの高揚感を味わった。

続く7曲目は「ナイター」。娘から、亡き父への思いを歌い上げるファンにも人気が高い名曲だ。ドームに広がった菜の花畑を照らす朧月夜の下で演奏された8曲目「菜ノ花畑」もまた、母親になる心境や、生まれてくる子どもへの思いを綴った名曲。まっすぐな歌詞とシンプルなメロディが、ひとりの女性の人生を浮かび上がらせ、涙が止まらなくなった。9曲目は一転、明るいサウンドと英語詞が特徴的な「To know You」へ。「東京」をテーマにした曲の雰囲気に合わせ、きらめくシティライトがドーム中で瞬いた。

2度目のMCで、ドーム内には1999年9月29日の東京の星空が投映された。Do As Infinityデビュー当日の夜である。当時の路上ライブの思い出やそれからの20年を笑って語り合いながらも、しきりに目元をぬぐう伴の姿に、思わず共感した観客は多いだろう。

「Dear friends~」と呼びかける10曲目「Yesterday & Today」は、そんな観客たちに向けたメッセージのようだった。「目をあけて、心を見つめて」と呼びかける英語のサビでステージの3人の声が重なると、深い赦しに満たされ、明るくなっていく空に慌てて頬の涙をぬぐった。そして、夜明けの空の下で演奏された最後の曲は、「陽のあたる坂道」。「遠回りでもたどりつける きっと きっと」。希望に満ちた力強い音楽とともに、LIVE in the DARK は終演を迎えた。

音楽と星空は、一瞬でどんな時間にも私たちを連れて行ってくれる。今回のLIVE in the DARKから感じたのは、そのトリップ感と、アーティストや聴き手の人生によって深まっていく『音楽』というものの豊かさだった。20年という、長いようで短い、短いようで長い不思議な年月を音楽に捧げてきたDo As Infinity のふたりに、生きることを音楽にせずにはいられない「表現者」への敬意も強く感じた。

2度目のMCで伴が投げかけた「20年前と変わらないものありますか?」という質問と、大渡が答えた「あの日の亮ちゃんをもってここにいるよ」という言葉が――ジョークだったにもかかわらず、音楽とともに、ずっと心に残っている。私たちもまた確実に、あの日の私たちとつながっているのだ。

■高野麻衣(音楽ライター)



2019/10/25(FRI) 笹川美和

1年ぶりの登場である。
昨年9月、「月や星の歌だけでライブをするのが長年の夢だった」という想いと、熱のこもった歌声で観客を圧倒したシンガーソングライター、笹川美和。その唯一無二の声と世界観を再び堪能するため、この夜もコニカミノルタプラネタリウム“天空”にはたくさんの観客が駆け付けた。

いつもより暗い冬めいたドーム内の夕空。前回の真っ赤な夕焼けとは対照的なその色彩に、笹川の2度目のLIVE in the DARKへの期待が高まった。BGMが止むとメンバーが登場。ピアノの山本隆二、サックス/フルートの加藤雄一郎につづいて、黒いドレス姿の笹川が現れ、ステージ中央に腰かけ挨拶をはじめる。

「ライブ中は暗闇に包まれるので笹川、見えません!」と会場を和ませたあと、LIVE in the DARK定番になっている拍手問題(曲間で拍手をするか否か)について「いちばん最後までとっておいていただければ」と彼女らしい提案も。もともとプライベートで“天空”を訪れた際「ここで歌いたい」と直感し、出演を熱望していたという彼女。「この場所でしか味わえない時間」を大切にしている気持ちが伝わってきた。

一瞬の静寂のあと、前奏とともに1曲目「笑」がはじまった。“笑い 笑え 泣き 笑え”と祈りのように繰り返されるフレーズと絡み合うサックスの音。新鮮なアレンジだが、やはり一瞬で彼女の世界に引き込まれていく。声の力に驚嘆しているうちに、空の茜色は暗闇に変化し、星が瞬きはじめる。曲の終わりで会場は暗闇に包まれ、私たちはLIVE in the DARKへと誘われたのだ。

2曲目は「緑の絨毯」。アップテンポの曲調に、星空はその日周スピードを上げる。3曲目の「影法師」に入ると、星々は下から上へと昇り始め、ダイナミックに動きつづける。宇宙を浮遊するような感覚。LIVE in the DARKでサックスを聴くのは初めてだが、宇宙空間にこんなにも合うなんて、と驚嘆したのをはっきり覚えている。

4曲目は「朧月夜」だ。“おぼろ月夜の下 あたしは走る(略)お使いがてら”という、ノスタルジーに満ちた歌詞に合わせ、星空には大きな朧月が浮かび、草原をやさしく照らす。ピアノとともに歌声を包むのはフルートの音。優しい風を思わせる音楽に、映像の中でそよぐ風を感じるようだった。

曲の終わりとともにMCへ。ドーム内には当日の10月25日に東京で見ることができる星空が投映される。今回も感無量といった様子の笹川は「またここで歌えてうれしい。けれど、はじまったということは終わってしまうのでさみしい」と複雑な心境を吐露。それはおそらく、会場の皆の気持ちの代弁だっただろう。

5曲目は「きぬぎぬ」。2018年のアルバム『新しい世界』で発表された、大人の愛を描いた美しい曲だ。タンゴのリズムにのせて「ああ 朝になれば さよならの時間」と歌い上げるサビのコード進行が、サックスの音色ともに、笹川の新しい魅力を引き出す。

続く6曲目は、10年以上愛され続ける名曲「流れ星」。そして7曲目の「それを知らない」へ。“愛する人を求めて彷徨う 目指す先は南十字星の麓”の歌詞のように、ほんとうの愛とは何かを一貫して歌い続けているのだ、と感極まってしまう。エキゾティックに、しかし力強く前進する曲調にあわせて、星々は上から下に動きを変え、最後には天の川が広がった。

8曲目「都会の灯」が始まると、ドームの星空は消え、走り去る光の粒が浮かび上がる。それはやがて、車の窓から眺める都会の夜景に。恋人によばれてタクシーに飛び乗るような、恋のときめきと切なさがつまった曲だ。サックスが似合う真夜中のドライブのあとは、9曲目の「水族館の人魚」へ。たゆたう音の中、空から滑り落ちるように海の底に沈み、水面越しに光を見上げる――LIVE in the DARKだからこそ味わえる、美しい映像体験だった。

「ほんとうにきれい。歌いながら、毎回涙が出そうになる」という感嘆からはじまった2回目のMCを経て、LIVE in the DARK の終わりが近づく。10曲目の「今日」に合わせて、空は明るくなっていく。夜明けの空をバックに最後の挨拶をしたあと、11曲目「高鳴り」へ。会場は希望に満ちた朝を迎えた。

星空やドーム映像とのコラボレーションは2度目の笹川だが、意外にもサックスやフルートとの共演は今回が初とのこと。新たなセッション――楽器ひとつで音楽が生まれ変わることへの感動を、皆で分かちあうような経験だった。同時に、LIVE in the DARKの無限の可能性を感じる回でもあった。音楽には、まだまださまざまなジャンルやリズムや音が存在するし、新しい響きによって、星空のイメージもどんどん広がっていく。そうした冒険に果敢に挑んでくれそうなのが、笹川美和だと思った。三度の登場を、心から願っている。

■高野麻衣(音楽ライター)



2019/7/24(WED) moumoon(東京公演)

長かった梅雨が終わりに近づき、青空が顔を覗かせた7月の夜。『LIVE in the DARK』に、moumoonが帰ってきた。「やわらかい月」という名を冠したふたりのプラネタリウムでの再演に、期待が高まった。

朱色と藍色が混ざった美しいマジック・ブルーの空を見上げ、期待に満ちた表情でmoumoonの登場を待ちわびる観客たち。BGMが止み、いよいよメンバーが登場―。今回は最もmoumoonの音をダイレクトに堪能することができる、ふたりきりのステージだ。
あたたかな拍手に応えるように、「星空と音楽が重なり合うのを楽しんで」と挨拶するYUKA。MASAKIがギターでリズムを刻むと、YUKAがウィンドチャイムを鳴らして歌い出す。

1曲目は、「どこへも行かないよ」。ゆったりとしたリズムに、YUKAの包み込むような声がそっと寄り添い、moumoonの幻想的な音の世界が広がっていく。聴き入るうちに夕陽は落ち、やがて一面の星空が音楽と溶け合っていった。

2曲目は「エメラルドの丘」。日周する星々がスピードを上がると、合わせて音楽もテンポを上げていく。ふたりだけで作るアコースティックなアレンジがあたたかな共感を高める。そして3曲目は、彼らが最高傑作と呼ぶ最新アルバム『NEWMOON』から「ひとつだけ、」。人を愛することの意味を切々と歌い上げる楽曲と、空に広がる天の川の美しさが、心の柔らかい部分に染み入っていくようだった。

感動のこもった拍手のあと、ギターのMASAKIがそっと歌いだした4曲目は、なんと名曲「A whole new world」。サビで重なるYUKAの声と、ダイナミックに回転する星々。まるで映画のワンシーンのような演出に、喝采が湧きおこった。
直後のMCではYUKAは「こんな星空見たことがない!」と喜びを言葉に。「どうしてもふたりで歌いたかった」という夢の実現や星空への思いを、会場全体で分かちあった。
続く5曲目は「moonlight」。キラキラと弾むような音楽とともに、星空が日周を続ける。そして6曲目。

再び『NEWMOON』から、「カタルシス」を披露した。“悲しい日ほどきれいな歌が生まれるだろう”という印象的な歌詞を、aFrameでリズムを刻みながら、低音で勇ましく歌い出すYUKA。カタルシス=浄化、をイメージした水滴がドーム内に降り注ぎ、後半では祈りと呼応するように夜空へと還っていく。

7曲目は「うつくしい人」。取り繕い、何かをごまかして生きる日常から、すべての人を解放するような名曲だ。歌声に共鳴するように、ステージから発光する色とりどりの光が、ドーム中を浮遊する。

そして8曲目「Will you?」。“雷鳴のような煌めき”と例える“あなた”への狂おしいほどの想いが歌い上げられ、空にはやがて、羽が舞い上がる。歌詞とは対照的に透き通った高音で歌い上げるYUKA。音楽家としての高度な技術とバランス感覚に唸りながらも、あまりの美しさに感情が揺さぶられ、涙がこぼれるのを止められなかった。

曲の終わりとともに、ドームには再び満天の星が。「今見えるこの星空は、100年後の今日の空です」という言葉に驚く観客たちに、YUKAは「世界は変わっていくけど、星空って変わらない。きっとずっと昔の人も、こうして星を見上げながら、大切な人のことを考えていたんじゃないかな」と語りかける。そして、未来へと思いをはせたあと、爽やかに「明るい歌を歌おう」と次の曲へ

9曲目は『NEWMOON』から、その名も「私たちは、光を選ぼう」。疾走感あふれる希望に満ちた楽曲とともに、空は少しずつ白んでいく。ほのかな切なさを感じながら迎えた10曲目は、YUKAが奏でるヴァイオリンのイントロも印象的な「ゆいいつむに」。「唯一無二なんだ 光る夢がある」という力強いメッセージを噛みしめるうちに夜は明け、moumoonの『LIVE in the DARK』は終演を迎えた。

圧巻のパフォーマンスと、生きることへの誠実さ――moumoonの『LIVE in the DARK』は、まさに唯一無二に満ちている。それは月のようにやさしく切ない、しかし嘘偽りのない、まっすぐで強い愛だ。「100年後、私たちはもう生きていないけど、私たちの音楽が残って、この空の下で生きている人たちに聴いてもらえたらいいね」というYUKAの言葉は、音楽を本気で愛する彼女らしい、切実な願いだと思った。

今回の公演は『LIVE in the DARK』初のツアー公演として東京と福岡で開催され、両公演共にソールドアウト、約800人もの人々が訪れた。この愛に満ちた空間が、これからもたくさんの人の心を照らすことを願ってやまない。来年もまた、この場所で会えますように。

■高野麻衣(音楽ライター)



2019/4/12(FRI) 堂珍嘉邦

とにかく、熱気に驚く夜だった。人気ボーカルデュオCHEMISTRYの堂珍嘉邦。圧倒的な歌唱力と表現力で愛される彼のソロライブが、コニカミノルタプラネタリウム“天空”の人気音楽イベント『LIVE in the DARK』の第10回記念公演として行われるのだ。このニュースはファンの間を駆け巡り、チケットは瞬く間に完売したという。

興奮に包まれた観客のあいだをすり抜け、ドームに足を踏み入れると、夕日に照らされた空が出迎えてくれた。空の色が赤々と変化すると、BGMが止み、いよいよ堂珍とバンドメンバーの石井マサユキ、上田禎が登場。白シャツに紺のベレーをあしらった堂珍が、期待が高まる客席に「拍手をよろしく」と語り掛ける。あたたかな一体感。静寂ののちに響きだす、インストのハーモニー。音に合わせて体を揺らす堂珍に、不思議と心が鎮まっていく。

1曲目は「未来ハンモック」。日没の空をバックに少年時代を思うような、染み入る音楽。「あの頃 話した僕らの未来に 今はどれくらい近づけただろう」。曲が終わると、拍手とともに観客のため息の気配を感じた。2曲目の「evergray」がはじまると、夕日が徐々に暗くなっていき、星が輝きはじめる。高まっていく音楽とともに、陽は完全に落ち、一面の星空へ。星は瞬きながら、ゆったりと日周運動を続ける。星空と音楽だけが残された暗闇で、堂珍の歌声はより近く、直接語りかけるように響いたのではないだろうか。これが、『LIVE in the DARK』の真骨頂だ。

やさしいイントロとともにはじまった3曲目は、武田カオリ(TICA)とのデュエット曲として発表された「アンドロメダ」。堂珍が語りかける「僕らの帰る家は 空の彼方 星たちがみな辿り着く場所」という歌詞とともに、心が宇宙へとトリップししていく。

4曲目「CHEEKY」では星空の緯度が変化し、星空のスピードも上がっていく。そして5曲目は、1998年発表のSPANOVA「僕らの孤独はタンバリンを鳴らす」のカバー。ポップな曲調に合わせ、空には南天の星々が輝いている。続く6曲目も、南国を思わせるレゲエのリズム。1993年のFishmansの名曲「いかれたBABY」のカバーだった。多くの人が歌い継ぐ名曲だが、堂珍はまるで最初から彼自身の歌だったかのように、驚くほどぴったりと歌いこなしていく。

そして7曲目「Heavenly」では、星空が一転して水中へと変化した。星のように漂う海月とともに水中をたゆたい、やがて月の光を求めるかのように水面近くへ浮上していく――言葉どおり天国的な、夢のような感覚だった。
天使の羽が舞い降りる8曲目もまた、今回のハイライトというべき瞬間となった。10年前に石井が作曲し、寝かせていたという未発表曲だ。あの瞬間、プラネタリウムという特別な場所で、この美しい曲に触れられたことを誰もが幸福に思っただろう。

9曲目「Lasers」に続いて、10曲目は最新シングルから「BIRDY」を披露。音楽とともに、徐々に空が明るくなっていった。通常、朝焼けとともに終演という演出が多い『LIVE in the DARK』だが、堂珍はここで最後のMCへ。「暗闇で聴覚が研ぎ澄まされるから、より一層歌声と演奏、星空を堪能できる。まさにケミストリー(化学変化)が起こる」と語る堂珍に、観客から熱い賛同が湧きおこった。
そして「朝を迎えたけどもう一度眠ってもらいます(笑)」というコメントに続いて、アンコールトラックとして位置付けられた11曲目「魔法の子守歌」へ。やさしい歌声に包まれながら、春の夜の『LIVE in the DARK』は穏やかな終演を迎えた。

今回のライブについて自らの言葉で「歌と星がシャワーのように降り注ぐ」と語っていた堂珍嘉邦。ストレートな星をうたう歌、というよりもメッセージ性を重視し、おそらく彼が愛してきた音楽のカバーも多く取り入れたセットリストから感じたのは、音楽と空間演出に対するプロフェッショナルな向き合い方だった。グッズデザインのコンセプトに触れたMCでの「いいことも悪いことも、宝箱につめこんでいく」という言葉にも、やさしい歌声の裏にあるストイックさを感じた。だからこそ彼は、ミュージカルに映画にと活動の場を広げ、観客を魅了し続けるのだろうと納得させられた。

7月5日の再演も決まった堂珍の『LIVE in the DARK』。七夕間近の夏の空を舞台に、次回はどんな「宝箱」を披露してくれるのか、期待が高まる。

■高野麻衣(音楽ライター)



2018/09/28(FRI) 笹川美和

9月の終わり。コニカミノルタプラネタリウム“天空”には、音楽と星空の共鳴を味わいたいと願うたくさんの観客が駆けつけた。

第7回を迎えるLIVE in the DARKのゲストは、独特の世界観で圧倒的な人気を誇るシンガーソングライター、笹川美和。唯一無二と称される歌声が、プラネタリウムという“非日常空間”でどのように響くか、期待が高まる。

会場のドームの空の色は、美しいマジック・ブルー。BGMが止むとメンバーが登場した。ピアノ・山本隆二、ギター・名越由貴夫につづいて、凛とした佇まいの笹川美和が現れ、ステージ中央に腰かける。観客のあたたかな拍手に挨拶すると、深いブレスとともに、1曲目「プリズム」へ。「君と二人で窓辺に佇んで あの放課後」――冒頭から、囁くように紡がれる歌声に観客が惹き込まれていくのを体感した。ピアノの旋律、弓で弾く歪んだギターの音も、その詩的な世界を彩る。「燃える 真っ赤に染まる夕焼け」という歌詞と呼応するように、空はやがて赤く燃え上がり、しだいに暗くなっていく。

2曲目は「隧道」。幼い頃に口ずさんだわらべ歌のようなメロディに、「トンネルくぐれば見えるかも」というシンプルな詞のリフレイン。切なさにぎゅっと心を掴まれているうちに、空には一つ、また一つと星が瞬きはじめ、一面の星空に。やがてドームは暗闇に包まれ、LIVE in the DARK――暗闇の中の音楽空間が完成した。

3曲目の「星の船」に合わせ、星空は日周を続け、ダイナミックに動きつづける。4曲目は本日がライブでは初披露となるエレファントカシマシの名曲「今宵の月のように」。笹川の低く色気のある歌声が、星々が輝く暗闇の中に染み入ってゆく。

曲の終わりとともに日周が止まり、MCへ。「星空、気持ちよくて眠っちゃいますよね」と会場をほぐしたあと、「ここから涙が出るほどきれいな映像ばかりだから、ぜひ観てほしい」とリハーサル時の感動を語った。笹川は、プライベートで“天空”を訪れた際に「ここで歌いたい」と直感し、実際にLIVE in the DARKがあることを知って出演を熱望していたのだという。「月や星の歌だけでライブをするのは、長年の夢でした」と喜びを語った。

5曲目に披露したのは「朧月夜」。アコースティックで音数の少ないLIVEアレンジの中、空には大きな朧月が浮かび、草原をやさしく照らす。変化していく雲の流れに、子ども時代の情景を思い出した人も多かっただろう。

一転して6曲目は、大人のせつない愛の形を描いた「愚かな願い」。「あたしを認めてお願いよ」と星に願う歌詞に、思わず涙がこぼれた。大人になっても人は、夜空を見上げることをやめない。しかしその行為には、さまざまな状況や思いがこめられているのだ。

7曲目は、アルバム『夜明け』から「流れ星」。再び愛とは何かを考えさせられる詞の世界を、淡々と歌い上げる笹川。サビでは頭上に流星群が、希望の光のように瞬いた。

次に披露されたのは、幻想的な世界へ誘うような「それを知らない」。「まるで遠くの アラビアの夜模様」を歌うエキゾチックな曲に合わせて、夜空には赤い花びらが広がり、炎と共に舞い上がる。9曲目は「水族館の人魚」。水面に浮かぶ満月が投映され、まるで滑り落ちるように海の中に沈んでいく。水面越しに光を見上げる――LIVE in the DARKでなければ味わえない、美しい幻想体験だった。

つづいて2回目のMCへ。自らが決めたセットリストに合わせて用意された映像について、「あまりにもきれいで、涙が出てしまって、本番ではあまり見すぎないようにがんばった」と語る笹川。「またここで歌いたい」というメッセージとともに、10曲目の「おやすみ」、そして最新曲である11曲目「高鳴り」を披露した。未来を思う胸の高鳴りを歌った終曲とともに、星々は少しずつ消え去り、会場は満ち足りた夜明けを迎えた。

LIVE in the DARKは一夜限りの特別な空間だ。アーティストの想い描く世界によって、星の見せ方も映像もまるで違うし、そのことを演奏者たち自身がともに楽しんでいる。フラットなステージ一つとっても、「音楽を分かちあう」という根本が実感できる。個人的な話だが、同郷(新潟)の笹川の歌に幼い頃の情景を思い浮かべながら、この空間で聴けてよかったと心から思った。またきっとここで、音楽を分かちあいたい。

■高野麻衣(音楽ライター)



2018/07/20(FRI) moumoon

夏の星空を見上げたくなる7月の夜。プラネタリウムを舞台に、「音楽」と「星のきらめき」、そして「暗闇」を味わう『LIVE in the DARK』の会場は、超満員の観客でにぎわった。第6回のゲストはmoumoon。ユニット名に月の名(moon)を冠した彼らにとって、こんなにふさわしい舞台はないだろう。

会場のドームの空の色は、パープルとピンクが混じる美しいマジック・ブルー。ステージにはランタンの柔らかい灯り。観客たちは期待に満ちた表情で、moumoonの登場を待ちわびていた。BGMが止み、いよいよメンバーが登場。暗闇に映える白いドレスで現れたヴォーカルのYUKAが挨拶すると、あたたかな拍手が。そのまま1曲目「summer time」の印象的なイントロに導かれていく。“夏の放課後の空”を思い出すような、さわやかで少しせつない曲調に、会場が一気に沸き立った。

続く2曲目は、星屑のようなグロッケンの音がきらめく「moonlight」。空の茜色も少しずつ暗くなっていく。愛らしい歌声と歌詞に耳をすましているうち、空には一つ、また一つと星が瞬きはじめる。曲の途中で一面の星空に。ステージは暗闇に包まれ、星空と音楽だけの空間となった。これぞ『LIVE in the DARK』。日周する星々が、幻想的な曲調とともに世界観に誘っていく。

観客の感動を受け止めるように流れ出したのは、3曲目の「tiny star」。星空は日周を続け、緯度変化でダイナミックに動きつづける。「ほら見て きらめく星たちよ 僕らもその一つ」。あたたかくも凛とした声で、切々と歌い上げるYUKAの歌や音楽に、思わず涙がこみ上げた。
曲の終わりとともに日周が止まり、YUKAが会場に語りかける。「この星空は、2006年7月26日、私たちがデビューした日の夜8時の空です」。感慨深げに見上げる観客たちに当時の思い出を語り、「過去には戻ることができないけれど、こういう形なら戻れる。MASAKIくんに出会って、デビューして、こうして聴いてくれるファンのみんなと出会ったのも本当に奇跡みたいなこと」と喜びを語った。

続く4曲目は星に願いを掛ける往年のスタンダードナンバー「星に願いを」。星空の日周のみのシンプルな演出だったが、YUKAの歌唱力――力強い中低音と、透き通った高音がいかんなく発揮されていた。5曲目は、「Hello, Shooting star」。「描いても描いても綺麗にならない 選んだ絵の具に罪はない」という歌詞に、いろいろなことがあっただろうmoumoonの12年間を重ね合わせてしまう。ラストのサビでは頭上に流星群が。思わず夢を祈ってしまった人もいたかもしれない。

そして6曲目「声」はまさに、YUKAの声を主役したかのような名曲。なんでもない日常を祝福するような歌詞と音楽にまたしても涙がにじむ。つづいて登場したのは、一気にSFの世界に飛びこむような7曲目「cocoon」。空にはストロボのような色とりどりの光が、やがて水彩画のように溶けていく。8曲目は「ハレルヤ」。「白夜のトウキョウに 夢見よ、踊れよ」と歌い上げるYUKAの歌声に共鳴するように、空には色とりどりのオーロラが現れ、ドームの中を浮遊する。迫力ある歌声もあいまって、ぞくぞくするような快感を覚えた。

9曲目の「Do you remember?」につづいて、2回目のMCへ。「あらためて、星や月の歌をたくさん作った。夜空を見上げながら作った曲も。夜空はいつもインスピレーションをくれる」と語るYUKA。悩んだとき、苦しいときに夜空を見上げるようになったのは、父の教えだという。「宇宙の大きさを考えると、悩みなんてちっぽけに思える」という言葉に、共感した方も多いだろう。2006年7月26日の夜空を見上げながら、「真上にはさそり座、左にはいて座が見える。みんなわかる?」瞬時にと見分ける姿にも、夜空や星座への本気の愛情を感じた。

ラストに演奏された10曲目は「Triangle」。「どんな日もこの空見上げ 同じ歌を口ずさんでいよう」という力強いメッセージソングとともに、星々は少しずつ消え去り、夜明けの空の下でmoumoonの『LIVE in the DARK』は終演を迎えた。

『LIVE in the DARK』を経験すると、星々や月が私たちを癒し、朝を迎えた空が希望をくれることに気づいていつも感動する。今回はとくに、ミュージシャンがそれらを繰り返し描く理由がわかって、心に染み入るような時間を共有することができた。真昼の月のように目に見えずとも、音楽はいつも私たちのそばにある。気づかせてくれたmoumoonに、深く感謝したい。

■高野麻衣(音楽ライター)



2018/04/20(FRI) THREE1989

夜風も温みはじめた4月。華やいだ表情の観客たちを迎えたのは、ドームに広がる美しい夕焼け。今回の主役は、全員1989年生まれの3人組エレクトロ・バンドTHREE1989(スリー)だ。70〜80年代のR&Bやディスコ・サウンドを巧みに取り入れた“シティ・ポップ”で知られる彼らの楽曲と、プラネタリウムという異色の組み合わせに期待が高まる。

ドームの空色がパープルとピンクが溶け合うマジック・ブルーに変わると、ステージにキーボードのShimoが姿を現した。続いてコーラスの3人とDJのDatch、ヴォーカルのShoheyが登場。夕闇の中、彼らのデビュー曲「High Times」で『LIVE in the DARK』はスタートした。
2016年の配信時、iTunesダンス・チャートで5位を記録したこの曲は、打ち込み中心のダンス・ミュージック。しっとりとしたピアノ弾き語りからスタートし、THREE1989の特徴のひとつであるShoheyの歌唱の巧みさが際立つ。そして曲の後半ではターンテーブルからビートがドロップされる。リズムセクションの振動も心地よく、曲の終わりには観客全員がTHREE1989の世界に引き込まれていた。
2曲目は「mist」。虫の声や水音のSEとともに会場は少しずつ暗くなり、空には一つ、また一つと星が瞬きはじめる。ゆったりとしたビートにのせて曲が進むにつれ、やがて一面の星空へ。星空と音楽だけに包まれる、『LIVE in the DARK』の醍醐味である。

続く3曲目の「Ram Coke」、4曲目の「UMBRELLA」は彼らの最新ナンバーだ。雨音のSEとともに、ドームに映し出される“雨の東京”。夜景、雨に滲むネオン、そして拡散するプリズム。THREE1989の持つグルーヴと都会の夜が一気にシンクロしていく。

曲が終わりMCへ。Shoheyが「この星空は、ちょうど今日(4月20日)の東京の星空なんですよ」と語りかけると、観客から大きなどよめきが生まれた。星空談義で盛り上がった後には、Datchが「みなさんも自分だけの流れ星を探してみてください」と決めゼリフ、全員にツッコミを入れられるという一幕も。

やがて「星空の旅に一緒に出かけましょう」という言葉ともに、ライブ再開。登場したのは人気曲「Don't miss it」だ。
カーラジオのDJがTHREE1989のニューアルバム発売を宣伝する、という粋な演出のあとドームに広がったのは、夜の東京を走る車からの眺め。「寡黙なビルの谷を走り抜けていく」といった歌詞や疾走感を再現したかのような、週末の都会の華やかなイメージが実写ベースで展開される。

そして「Bland New Love」を星空と共ともに演奏し、続く「APOLLO」ではいよいよ旅は宇宙へ。ドームには大きな月が現れ、異次元の宇宙空間に、色とりどりのブロックが現れては消えていく。レトロフューチャー。未来だけれど、懐かしい、「星屑のストーリー」――THREE1989の楽曲や歌詞にぴったり寄り添う映像体験に鼓動が高鳴った。

その思いは、おそらくステージの3人も同じ。2回目のMCでは、オリジナルの映像演出が投映された3曲に触れ、「星空が迫ってくる感じ」「心が異次元に飛んでいって、自分を見下ろしているよう」などと興奮を語った。会場中が大きく頷き、本ライブの満足度が高まっていく。

MCに続いて、ドーム内は再び星でいっぱいに。往年のスタンダードナンバー「Fly me to the moon」を引用したインタールドでは、星が床面にも映し出され、ドーム全体がミラーボールのように浮遊する。
そして曲は途切れることなく彼らの人気曲「UNIVERSE」へ。その違和感のなさ、巧みな構成に震えるほどの感動を味わった。過去を敬愛し、未来へ向かう。その真摯な音楽づくりが、彼らの魅力なのだ。
最高の夜の終わりを予感させる「涙のダンスフロア」では、イントロからすでに涙腺を刺激された。切なくも美しいバラードのあと、星々は少しずつ消え去り、空が白んでいく。ラストの「Mr. Sunshine」では、メンバー同士のアイコンタクトと笑顔も印象的だった。夜は去るが、また新しい一日が始まる――そんな希望をのせて、『LIVE in the DARK』は終演を迎えた。

エレクトロ・ミュージックとプラネタリウム。異色の組み合わせに思えたTHREE1989の『LIVE in the DARK』だが、そこには新鮮な喜びと、音楽への尽きせぬ愛があった。最後のMCでShoheyが語った「これからも挑戦し続けたい」という言葉、そこにあふれていた前進する人々のパワーこそが、これからの音楽を作っていくのだと再確認させられた。『LIVE in the DARK』がそんな音楽の発信基地になっていくとしたら、こんなに素敵なことはない。

■高野麻衣(音楽ライター)



2018/02/16(FRI) SPECIAL OTHERS ACOUSTIC

ドームに足を踏み入れた途端、広がる美しい夕焼けが広がる。2月の真冬の夜から、心地よい風が吹く野外コンサートの夕方にトリップするような演出に、続々と入場する観客から歓声が上がる。ステージとの距離が近いこと、シートの座り心地がよいこと――フェスでの人気を誇る”SPECIAL OTHERS ACOUSTIC” (以下:S.O.A)のファンにはたまらない演出に、会場の期待感が高まっていく。

時間の経過と共にドームの空の色はやがて、ブルーとパープルとピンクが溶け合う、美しいマジック・タイムへ。BGMが止むと、ステージにメンバー4人が登場した。そして、鮮やかなギターが鳴り響く。彼らの代表曲をアコースティックアレンジした「BEN」のイントロだ。

 ギター・アンサンブルにグロッケンのメロディが重なり、“音“が次第に“音楽”になる。耳をすましているうちに、空には一つ、また一つと星が瞬きはじめる。そして、曲のクライマックスとともに広がる、一面の星空。ステージは暗闇に包まれ、会場中が息をのむ。そこにあるのは星空と音楽だけ。会場が一気にプラネタリウムの世界に惹きこまれ、一体になるのを感じた。これぞ『LIVE in the DARK』だ。

曲が終わるとステージ上では暗闇のなかメンバーが動き、それぞれの楽器を鳴らす気配がする。次は何が起こるのだろう、といつも以上に耳を澄ましてしまう。続く2曲目は「halo」。ドラムがリズムを刻みはじめると、その振動がいつも以上に直接体に響くようだった。

3曲目は、プラネタリウムのために作られたかのような名曲「Galaxy」だ。ドームの星空のなかに、遠く天の川銀河が映し出される。心地よいリズムとともに、少しずつ銀河に近づいていく。銀河のなかに入りこむと、空には星座たち現れ、過ぎ去っていく。ダイナミックに疾走する宇宙の旅――生の楽器の音と映像があいまって、まるで銀河鉄道に乗りこんだかのような温かみがある。やがて見えてくる青い光。そこにあるのは、私たちの地球だ。

4曲目は「March」。タイトルどおりの行進曲のリズムと、鍵盤ハーモニカのメロディが懐かしく、感極まる。星空の下、宇宙の旅から帰還した私たちを音楽が包み込むようだった。
うっとりしたところに、ドラム宮原の囁き声。「おはようございます」とまるでドッキリ番組のようなMCにキーボードの芹澤がツッコミを入れ、会場から笑いが起こる。しばし感動を分かちあったあと、ドーム内は再び星でいっぱいに。往年のスタンダードナンバーを引用したインタールドでは、星が床面にも映し出され、まるでミラーボールのような演出。本当に宇宙空間を自分が漂っているようにすら感じることができた。

6曲目「LINE」もS.O.Aの代表曲。まさに野外フェスの夜、という雰囲気の穏やかな曲調に合わせて、ドームには夜の森の情景が広がっていく。ゆらめくキャンプファイヤーの炎、それを囲む木々、そして頭上には星々が、音楽に合わせるようにゆっくりと日周する。プラネタリウムでしか味わえない、極上の時間が流れていく。

7曲目も、やはり彼らの代表曲をアコースティックアレンジした「STAR」。どんな「星」が見られるのだろう? ――そんな期待に意表をついて現れたのは、ドーム中を浮遊する色とりどりのフレア。音楽に寄り添いながら、色を変え、形を変えてたゆたう光の粒子に、体全体が包みこまれるような、ぞくぞくするような快感を覚えた。

再びのMCでは、男子小学生のような星座談義や星にまつわるエピソードが披露され、笑いに包まれた。「プラネタリウム、ガチ楽しい」「気持ちよくて、いつまでも語っちゃうね」というコメントに、おそらく会場中が共感したはずだ。
続いて演奏された8曲目は「Wait for the Sun」。タイトルどおり星々が少しずつ消え去り、空が白んでいく。夜明けが近いのだ、と悟ると、驚くほどの寂しさが募った。「またここでライブがしたい」という最後のMCを挟み、明日への希望に満ちたエンディング曲「IDOL」へ――万感の思いとともに、『LIVE in the DARK』は終演を迎えた。

チケットが即日ソールドアウトを記録したS.O.Aの『LIVE in the DARK』は、まさに予想を超えるおもしろさ、そして感動を私たちに与えてくれた。卓越したテクニックのみならず、親しみやすいメロディやMCが持ち味のS.O.Aだからこそ、夕焼けや星という自然へのリスペクトも、まっすぐ伝わってきたように思う。ライブはその場にいる人、もの、景色、匂い、すべてで作り上げるもの。そんな幸福な一体感を味わえた、忘れられない夜となった。彼らの再びの登場を、心から願っている。

■本文:高野麻衣(音楽ライター)



2017/09/15(FRI) Rie fu(リエ・フゥ)

ドーム内にオープニングSEが流れ始めると、Rie fuがバイオリン、チェロ奏者と共にプラネタリウムのステージに登場した。
普段イギリスを拠点に活動を行う彼女が日本でライブを行うのは2016年12月以来、約10ヵ月ぶりとなる。2017年初頭からプラネタリウムでのライブを企画していたというので、約9ヵ月間にも及ぶ構想、制作期間を経て本公演が実現したそうだ。

ドームに映し出された夕景が刻々と表情を変え、暗闇が広がってゆく。最初に披露されたのは代表曲『あなたがここにいる理由』。静かなピアノのイントロからライブはスタートした。そして徐々にチェロ、バイオリンの音色が重なり、駆け上がり、鍵盤のクレッシェンドと共にサビを迎える。会場は一気に彼女の“歌”に吸い込まれていく。演奏が進むに連れて場内は暗さをさらに増し、観客は「見る」ことから「聴く」に感覚をシフトしていく。

次に披露されたのは彼女のデビュー曲『decay』。原曲のアップテンポなアレンジとは異なり、緩やかで優しいアレンジだ。曲の中盤には陽は完全に沈み、一等星が一つ、また一つと瞬きながら暗闇に輝き始める。ゆっくりと日周する星々と楽曲のテンポが重なり、プラネタリウムでしか味わえない静かで深い時間が流れていた。続く『Romantic(Strings version)』が始まる頃には、既に満天の星々がドーム内に輝いていた。先程までのスローなテンポとは異なり、楽曲の持つスピード感と呼応するように星々もテンポを上げ廻り続ける。最後のサビに差し掛かると、星々の間を無数の流れ星が流れ、観客は更にプラネタリウムと音楽の世界に引き込まれていく。そして新曲『Better View』のピアノソロアレンジも特別に披露された。

「この特別な空間を一緒に共有できたら嬉しいです」とMCを挟みライブは中盤に差し掛かる。続く『Until I Say』もファンの間では特に人気の高い楽曲だ。この楽曲をイメージして特別に制作された、花びらが舞い落ちるドーム映像が映し出されると、今までの少し緊張感のあった会場が暖かな空気で包まれていくように感じた。星空以外にもこういった映像演出ができるのは最新のプラネタリウムならではだろう。

次に披露された楽曲はRie fuのファンには聞き覚えの無いイントロだった。「LIVE in the DARK」ではお馴染みとなった、星や夜に関わる特別なカバー曲。今回は事前に自身のSNSを通じファンからカバー候補曲を募集し、その中の一曲をRie fu本人が選んだそうだ。楽曲はBUMP OF CHICKENの名曲『プラネタリウム』。意外と言えば意外な選曲だが、星空に溶け込むようにアレンジされたストリングスの音色と、彼女の声に染められたこの名曲が、特別な空間をより特別に演出する。歌詞を丁寧に歌い上げるパフォーマンスは、改めて彼女の表現者としてのポテンシャルの高さを示していた。

『プラネタリウム』が終わると、ドームには満月が映し出され『ツキアカリ』が演奏される。これもこのライブの為の特別な映像演出だ。まるで月明かりに照らされるように会場がうっすらと明るくなると、気持ちよさそうにうたた寝する人もちらほら居ることに気付く。この贅沢もプラネタリウムでの楽しみの一つなのかも知れない。

MCを挟み、ライブは後半に差し掛かる。新曲『Some Day』は楽器をアコースティック・ギターに持ち替えて披露された。夜の暗い海が投映され、星空とはまた違う“夜”が表現される。続いて『I Wanna Go To A Place...』がギターとストリングスで演奏される。このライブで最もエモーショナルに歌う彼女の歌声に導かれるように、徐々に夜が明け、真っ赤に染まる朝焼けが映し出された。そしてMCを挟み、最後の楽曲『Life is Like a Boat』が披露され「LIVE in the DARK」は終演を迎えた。

音楽は“記憶”と言い換えることができると思う。それは、音楽を聞くと当時の記憶が鮮明によみがえり、その時の感情までをも呼び起こす事があるからだ。特に名曲と言われる楽曲は、それぞれがその曲に対して、それぞれの記憶を宿している。最後に演奏された『Life is Like a Boat』もそういった意味でまさに“名曲”だ。13年以上前に発表されたこの楽曲を観客はそれぞれの記憶と重ね合わせて聞いていたに違いない。ドームには海に昇る朝日が映し出される。人生の船出と決意をテーマに歌われるこの楽曲に合わせた特別な演出だった。きっと「LIVE in the DARK」で聴いた『Life is Like a Boat』はまた、それぞれの新たな記憶となって、さらに名曲として聴き続けられるのだろう。



2017/07/20(THU) Schroeder-Headz

開場と同時にドームに投映されていた、夕景は時間と共に徐々に暗さを増し、“夜”が始まろうとしていた。19時30分、ステージに登場したSchroeder-Headz(渡辺シュンスケ)を観客は大きな拍手で出迎えた。ここから約1時間、MC無しのノンストップのライブがスタートする。ピアノの前に着いた渡辺シュンスケから感じ取れる緊張感が、一瞬にしてドーム内の空気を変え、誰もが彼が発する最初の“一音”に耳を澄ませていた。

この日、渡辺シュンスケが1曲目に選んだ楽曲は3rdアルバム『特異点』に収録されている「Lake bed」。ノスタルジックなイントロから「LIVE in the DARK」は静かにスタートした。演奏が進むにつれ、闇に包まれたドームには、徐々に一等星が輝き始める。曲の終盤には、暗闇、ピアノの旋律、そして満天の星々だけが残されていた。

続く「Newdays」もピアノソロによる演奏が行われた。演出は引き続き、満天の星々のみ。ゆっくりと日周運動をする星空に、明るく軽快なメロディーが響き渡る。改めて、『星空』という演出は、明るい曲も、落ち着いた曲も、聴き手のイマジネーションを高揚させ、それぞれの感性によって感動を生み出すものだと感じた。それは決して派手な演出ではないが、とても刺激的な体験なのだ。

続いて演奏される4曲には、全天周ドーム映像の演出が用意されていた。映像演出を担当したのは、数多くのライブ演出を手掛けるビジュアルデザインスタジオ“HERE.”。プラネタリウムで体験する全天周ドーム映像は、平面のスクリーンでは決して味わうことのできない、圧倒的な没入感がある。それは、自分自身がその映像世界に“入り込んだような感覚”といっても過言ではないだろう。

「Petal」では幾何学模様の世界を、「Surface」では空中を浮遊する感覚を、続く「Wildthing's Arm」では近未来SF映画のCGの様な不思議な世界へ、そして「Blue Bird」では水彩で描かれた絵本の世界へと繋がる。目の前に広がる非日常的な映像世界と、Schroeder-Headzの演奏がシンクロし、観客は一気に引き込まれ、感覚が覚醒していく。これもプラネタリウムライブでしかできない唯一無二の体験だ。

映像が終わると、ひと時の夢から覚めたように、満天の星々が煌めいていた。続く楽曲は、ピアノソロによる「インタールード」。即興で奏でられる、緩やかで美しい演奏に、覚醒した感覚が徐々にクールダウンしていく。そしてライブはクライマックスへ。

続く「HORIZON」でも全天周の映像演出が用意されていた。一言で表すと、それは万華鏡の中に入り込んだ感覚。花火のようなカラフルな光の粒子や線が、ドーム内を飛び交いながら幾重にも重なり、演奏に合わせて変化を繰り返す。ストリングスのオケに合わせ奏でられるピアノの旋律は、観客を優しく包み込み、まるで魔法の様に音楽と映像の世界に吸い込んでいく。

そして映像が終わると再び星夜の世界へ。最後の楽曲「DAWN」が演奏され始めると、徐々に夜空は白み、朝焼けが映し出された。演奏が終わり、渡辺シュンスケが立ち上がると、会場は大きな拍手でつつみ込まれていた。渡辺シュンスケは穏やかな表情で「星空も映像も美しく、僕自身も気持ちよく演奏させて頂きました」と語り、舞台を後にした。

プラネタリウムは星空を鑑賞する場所、宇宙を勉強する場所、という概念はもはや本イベントにおいては存在しなかった。リアルな星空、視野を覆い尽くす美しいドーム映像、そしてSchroeder-Headzが奏でる、繊細で優雅なピアノの旋律。そのすべてが高次元で融合し、プラネタリウムでありながら、全く新しい音楽エンターテインメント空間が形成されていたからだ。
そもそも都会で生活する人々にとっては、光害のない“真の暗闇”の中で満天の星々を見ること自体が“非日常体験”であり、その中で全神経を集中させて、音楽に向き合うことは他の音楽イベントでは味わえない、貴重な体験だったに違いない。



2017/04/12(WED) 安藤 裕子

安藤裕子が人前で歌うのは、昨年12月のイベント出演以来、約4か月ぶり。座席数はわずか200席。プラネタリウムという、特殊な環境が作りだす期待と緊張感で、場内は他のライブには無い独特の空気で満たされていた。開場時、プラネタリウムドームには夕景が映し出され、本物の陽が落ちていくかのように徐々に場内は暗く、そして静かになっていく。

「お疲れの方もいらっしゃると思いますので、寝てしまった人を起こさないように、拍手はやめておきましょうね」という安藤らしいMCで『LIVE in the DARK』は幕を開けた。この日、一曲目に歌われたのは1stミニアルバムに収録の『summer』。本人が事前にSNSなどでアナウンスしていた通りの選曲に、観客の期待感は、より一層高まりを見せる。「うっすらとスターライツ!」と唄われるサビに差し掛かると、夕暮れはその深さを増し、空には一等星が瞬きながら輝き始めていた。曲の終盤には完全に陽は沈み、はわずかなステージ照明と安藤の歌声、そして満天の星々だけが残されていた。

続く『勘違い』『星とワルツ』ではステージ照明も、さらにぐっと落とされ、プラネタリウム機が映し出す“高精細な星々”と“音楽”のみ。他のライブではあまり経験できない特別な空間が形成されていく。ピアノとギターによるシンプルな編成で歌う安藤の歌声は、まるで星明りから降り注ぐような不思議な感覚に囚われ、改めて彼女の表現者としての才覚が際立っていた。

プラネタリウムには星空を愉しむ以外に、もう一つ大きな魅力がある。それは視野を覆い尽くす程に、ドーム全体に広がる全天周の映像だ。シングル曲でもある『海原の月』『The Still Steel Down』では、雲間に灯る月明かり、海に沈む月、そして四季が緩やかに巡り、オーロラの映像が映し出されると、その圧倒的な没入感と、彼女の心地よい歌声に観客はさらにプラネタリウムの世界に飲み込まれていく。

続く『唄い前夜』でも、安藤の優しくそして静謐(せいひつ)な歌声と共に、天の川銀河、太陽系が現れ、私たちの住む地球が映し出された。それはまるで、宇宙から地球を眺めているような浮遊感すらも感じられた。決して派手ではないが、この美しい音楽と映像の融合はプラネタリウムならではだ。

場内に再び星々が輝くと、「プラネタリウム」(原曲:大塚愛)が披露された。ドーム全天に投影された88星座の下、原曲よりもテンポを落としたアレンジでゆったりとした時間が流れていく。そして『のうぜんかつら(リプライズ)』が始まると徐々に夜空は白み、朝陽と共にライブはクライマックスへ。朝を迎え、ドームいっぱいに広がる青空の下、安藤は小沢健二の名曲「ぼくらが旅に出る理由」を力の限り歌い上げ会場を後にした。

星々が輝く暗闇の中、耳を澄まして感覚を研ぎ澄ませる。これは非常に集中力と体力がいる。開演中は、安藤の顔さえも見ることのできない場面もあるライブだったが、だからこそ普段のライブでは見落としてしまいそうな微かな声の揺らぎや、感情の起伏を感じることができる。プラネタリウムという特殊な環境と、感情表現に長けた安藤裕子の“歌声”がシンクロした、唯一無二のライブとなった。

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